(前回の続き)


クソッタレは、人の少ない朝の新宿を公園に向かって歩いた。
モモ子には全くと言っていい程、疲れは見えない。


歩いていると、モモ子は必ずクソッタレの右側を歩こうとする。
そして、無駄に距離が近い気がしていた。


モモ子いわく「アタシ、男の人と歩く時の立ち位置決まってるの」だそうだ。
全くもって意味がわからねえ。一体何のジンクスだよ。


そしてこの時、クソッタレは思った。
「モモ子は一体何が目的で、今ここにいるのだろうか」と。


1. クソッタレの金が目当て
2. 単純に友達になりたいから
3. カレシが欲しいから
4. アレがしたいから


この日、一緒にいて、1では無いのはなんとなく解った。
公園に行きたいなどと言う時点で、4も無いだろう。


クソッタレが望むのは、2or4だったようなのだが…。
どうやら、モモ子の目的は3だということは、クソッタレも薄々気付いていた。


…。


もう電車も動き始めた時間だ。
公園も充分散歩した。


クソッタレは一番面倒臭い展開を回避するべく、帰宅を提案した。
そして、この日も仕事であるモモ子は、これを難無く可決したのである。


これでやっと家に帰れる、クソ長かった1日もやっと終わるという安堵感。
しかし駅に向かう道、クソッタレは不甲斐無さと罪悪感で言葉数は少ない。


そんなクソッタレに、モモ子は容赦無く映画の話題を振ってくる。
モモ子は、次のミッションである「一緒に映画を見に行く」を実行しようとしていた。


クソッタレもその不穏な空気を察知し、全ての回答を「ふーん」「へー」「そうなんだ」で終わらす。
映画に興味があるようなフリをしてしまったら、もうおしまいなのである。
面倒な展開を回避するべく、このミッションは遂行させてはいけない。


…。


そんなやり取りをしているうちに、駅に着いた。
「またね」などと、適当なことを言いつつ、2人は別れた。


帰りの電車の中、クソッタレは既に瀕死状態の疲労困憊であった。
そして、いつも通りの不甲斐無い結果に、


「まじ、これ誰にも言えねーわ」
「あぁ、またやっちまった」
「滝に打たれたい」
「樹海行きたい」


などと、思ったという。


…。


クソッタレが家に着いた頃、モモ子からメールが。


「また遊ぼうね、てか誘ってよ!」的な内容だったようだ。
やはり、あの不穏な空気は、クソッタレの読み違いじゃなかったらしい。


クソッタレは、何も無かったことにして、床に着いた。
「もう目が覚めませんように」と思いつつ。


…。


この一件の後、モモ子の姿を見たものは誰もいない。
そしてこのクソッタレは、今も世の中に迷惑を掛けながら、どこかで生きていることでしょう。


(おしまい)




注:この物語がフィクションであることを望みます…。